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谷尻誠さんをゲストに迎えて

ジャーナル

2020年08月25日

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建築学科,インテリアデザイン学科 2年次の選択科目「設計実務演習」の課題中間講評のゲストとして谷尻誠さん(本校特任講師)をお迎えし,オンラインで講評とアドバイスをしていただきました.

ちょうど半年前,前年度の卒業設計の講評会に,本校で直接会ってお話をしていただいた2月25日から半年が経ち,その間に皆さんご存じの通り,大きく世界が変わってしまいました.そのような経緯もあって,この半年で谷尻先生がどう世の中の見方を変えたのか,どんな変化を感じているのかについて,授業担当の西尾先生が尋ねます.

『場所』の名前が意味を持たなくなってきた

西尾先生:「ちょうど前回,学校に来てもらったときに,ちょうどコロナが広がってなんかヤバいんじゃないって,ミラノサローネもキャンセルになるんじゃないかって話してて.その後すぐに,世の中がガラッと変わってしまいました.それから半年経つんですけど,谷尻さんの中で,どんな変化を感じていますか?」

谷尻誠先生:「なんか,もうあまり『場所』の名前が意味を持たなくなってきたんだなと思っています.ここはオフィスです,とか,ここは家です,とか,そういう限定のされ方が取り払われるようになってきているなと思っています」

「ちょうど今,家を建てたんですけど(ご自身の自邸が東京で完成したばかり,この会話もその自邸から届けていただいています),住宅の打合せをするときも,もうオフィスじゃなくて,実際にこの家に来てもらって,実際に暮らしぶりを見せながら打合せしたり,『これ,自分の家なんだけど,むちゃくちゃ仕事道具だな』って思って.もう,家だとかオフィスだとか,仕事場だとか,そういう機能や名前で分け隔てる世の中ではなくなってきたんだなって.コロナがそういう風に世の中を変えたんだなって感じています」

西尾先生:「そうですよね,それと例えば谷尻さんはこれまで海外含めて(プロジェクトの打合せや現場確認などのために)移動がすごかったでしょう?そのあたりも大きく変わっていますよねきっと,ずっともうあれから東京ですか?」

谷尻先生:「はい,そうですね.変な話,このままいくと事務所の年間の交通費が1/10くらいに減りそうです(笑)」

西尾先生:「はあー,やっぱりそれくらい移動できないんですね…」

谷尻先生:「でも,やはり,海外のプロジェクトも全部止まりましたし,で,もう,クライアントも,どんどん仕掛けていくという考え方を変え始めています.やはり,コロナで見通しが暗いので.そんな中でも,まあ仕掛けていく人もいるんですけど,でも全体としては明らかに仕事が減るんです.そうしたら,今度は僕らとしては時間が出来るので,不安もまああるんですけど,同時に,いろんなことを考えて仕掛けるタイミングでもあるなと思っていて.ちょうど今年,事務所を起こして20年になるんですよ.だからもう,1から始めるつもりでやろうかなって(笑)気分的に」

西尾先生:「ははは,1からですか」

谷尻先生:「気分的に1からという感覚で.独立して1年目のつもりでどうやろうかなとか考えています.どうやって仕事を取ろうかとか.何を目標にやっていったらいいのかとか,あらためて考える時間をもらえてるんだなって思っています.どんな仕事が出来るのかって逆に楽しみでもあります」

西尾先生:「でも,実際には何十人ものスタッフがいるわけじゃないですか,彼らと一緒になって考えていくっていう感じでしょうか」

谷尻先生:「はい,みんなにも考えてもらいたいと思っています.最近スタッフに言ったんですけど,『みんなのために,給料払うために銀行からお金借りたり,やりたくない仕事を取ったりとかは絶対にしないからね』って(笑)でもそれは,自分たちが楽しく仕事をしている環境でここまでやってきたので,会社を大きくすることが目標ではないし,会社を維持することがやりたいことでもないし,会社を維持しないといけないって思ったときには,もうその時は会社に魅力がないってことだから,みんなが本気でやらないと未来はないからね,って話したんですよ」

西尾先生:「それは,しっかりスタッフに考えて動けよっていう愛のあるメッセージですよね」

谷尻先生:「まあ,実際すぐに会社がつぶれたりすることは無いんですけど,実際この状況がいつまで続くかは誰も分からないですし,もし2年3年続いたら,多くの設計事務所はダメになると思うんですよね.だから,一人一人がどうやっていけばいいのかをしっかり考えないと.でも,逆に言えば,みんなが停滞するからこそ,何か新しいやり方を見つければ価値が生まれるし,ワクワクする思いと,心配とが同時にあるっていう感じです」

西尾先生:「そうですよね.今実際,学生も,特に2年生は就職活動も急にこんなになって停滞して不安に思っているんですよね.でも,いま谷尻さんが言われたように,これから必要なのは,どこかに 所属して依存するんではなくて,自分で考えて動ける人なんだろうなっていう事ですよね」

谷尻先生:「うん,ほんとそうですよね.ちょうど,非常事態宣言が出た次の日に,オンラインサロンの募集をしたんですよ」

西尾先生:「ええ,あの『社外取締役』のですよね」

谷尻先生:「はい.あれも,仕事づくりのためにやっていて,変な話,仕事が生まれれば設計って出来るじゃないですか.100人の枠で募集したら600くらい応募があったんですよ」

西尾先生:「すごいですね」

谷尻先生:「ええ.それでちょうど今2回目の募集をしているところなんですけど.ちゃんとみんな自分たちで学びたいということでもあるし,そこにお金があつまってくるので,毎月300万円くらいの資金ができるんですよ.そしたら,それでみんなで土地買って建物立ててみんなが利用できるような場所を作ってもいいなと思っていたりします」

西尾先生:「だから,もう,会社っていうものが個人に細分化されているというか,会社の仕事を分業していたしくみだったのが,どんどん個人が出来る仕事の積み上げで会社の仕事ができてくるっていう逆転現象が起きてきている気もしますよね」

谷尻先生:「そう,ある意味では帰属意識が意味なくなる,意味なくなるとまでは言わないけど,かなり希薄になるというか,そういう気はしますね」

西尾先生:「なるほど.ありがとうございます.まずは僕の方から谷尻さんに,今からの社会の状況をどう考えるかについてお話を伺ってみました.続いて,学生から何かありますか?」

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このあと3名の学生からの質問に答えてくださいました。

・この時代どこから学べばいいのでしょうか?
・今,イベントについてどう考えますか?
・谷尻先生のような考え方をするようになったきっかけはありますか?

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谷尻 誠 Tanijiri Makoto
SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 設立 共同主宰

1974年 広島県生まれ
1994年 本兼建築設計事務所
1999年 HAL建築工房
2000年 建築設計事務所suppose design office 設立
2014年 SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 設立 共同主宰

2001年- 穴吹デザイン専門学校非常勤講師
2011年- 広島女学院大学 客員教授
2012年-2016年 武蔵野美術大学 非常勤講師
2014年-2016年 昭和女子大学 非常勤講師
2015年- 大阪芸術大学准教授

社食堂、絶景不動産、21世紀工務店、未来創作所、Bird bath & KIOSK、tectureを経営

 

 

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