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谷尻誠さんをゲストに迎えて  完全版

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建築学科,インテリアデザイン学科 2年次の選択科目「設計実務演習」の課題中間講評のゲストとして谷尻誠さん(本校特任講師)をお迎えし,オンラインで講評とアドバイスをしていただきました.

ちょうど半年前,前年度の卒業設計の講評会に,本校で直接会ってお話をしていただいた2月25日から半年が経ち,その間に皆さんご存じの通り,大きく世界が変わってしまいました.そのような経緯もあって,この半年で谷尻先生がどう世の中の見方を変えたのか,どんな変化を感じているのかについて,授業担当の西尾先生が尋ねます.

『場所』の名前が意味を持たなくなってきた

西尾先生:「ちょうど前回,学校に来てもらったときに,ちょうどコロナが広がってなんかヤバいんじゃないって,ミラノサローネもキャンセルになるんじゃないかって話してて.その後すぐに,世の中がガラッと変わってしまいました.それから半年経つんですけど,谷尻さんの中で,どんな変化を感じていますか?」

谷尻誠先生:「なんか,もうあまり『場所』の名前が意味を持たなくなってきたんだなと思っています.ここはオフィスです,とか,ここは家です,とか,そういう限定のされ方が取り払われるようになってきているなと思っています」

「ちょうど今,家を建てたんですけど(ご自身の自邸が東京で完成したばかり,この会話もその自邸から届けていただいています),住宅の打合せをするときも,もうオフィスじゃなくて,実際にこの家に来てもらって,実際に暮らしぶりを見せながら打合せしたり,『これ,自分の家なんだけど,むちゃくちゃ仕事道具だな』って思って.もう,家だとかオフィスだとか,仕事場だとか,そういう機能や名前で分け隔てる世の中ではなくなってきたんだなって.コロナがそういう風に世の中を変えたんだなって感じています」

西尾先生:「そうですよね,それと例えば谷尻さんはこれまで海外含めて(プロジェクトの打合せや現場確認などのために)移動がすごかったでしょう?そのあたりも大きく変わっていますよねきっと,ずっともうあれから東京ですか?」

谷尻先生:「はい,そうですね.変な話,このままいくと事務所の年間の交通費が1/10くらいに減りそうです(笑)」

西尾先生:「はあー,やっぱりそれくらい移動できないんですね…」

谷尻先生:「でも,やはり,海外のプロジェクトも全部止まりましたし,で,もう,クライアントも,どんどん仕掛けていくという考え方を変え始めています.やはり,コロナで見通しが暗いので.そんな中でも,まあ仕掛けていく人もいるんですけど,でも全体としては明らかに仕事が減るんです.そうしたら,今度は僕らとしては時間が出来るので,不安もまああるんですけど,同時に,いろんなことを考えて仕掛けるタイミングでもあるなと思っていて.ちょうど今年,事務所を起こして20年になるんですよ.だからもう,1から始めるつもりでやろうかなって(笑)気分的に」

西尾先生:「ははは,1からですか」

谷尻先生:「気分的に1からという感覚で.独立して1年目のつもりでどうやろうかなとか考えています.どうやって仕事を取ろうかとか.何を目標にやっていったらいいのかとか,あらためて考える時間をもらえてるんだなって思っています.どんな仕事が出来るのかって逆に楽しみでもあります」

西尾先生:「でも,実際には何十人ものスタッフがいるわけじゃないですか,彼らと一緒になって考えていくっていう感じでしょうか」

谷尻先生:「はい,みんなにも考えてもらいたいと思っています.最近スタッフに言ったんですけど,『みんなのために,給料払うために銀行からお金借りたり,やりたくない仕事を取ったりとかは絶対にしないからね』って(笑)でもそれは,自分たちが楽しく仕事をしている環境でここまでやってきたので,会社を大きくすることが目標ではないし,会社を維持することがやりたいことでもないし,会社を維持しないといけないって思ったときには,もうその時は会社に魅力がないってことだから,みんなが本気でやらないと未来はないからね,って話したんですよ」

西尾先生:「それは,しっかりスタッフに考えて動けよっていう愛のあるメッセージですよね」

谷尻先生:「まあ,実際すぐに会社がつぶれたりすることは無いんですけど,実際この状況がいつまで続くかは誰も分からないですし,もし2年3年続いたら,多くの設計事務所はダメになると思うんですよね.だから,一人一人がどうやっていけばいいのかをしっかり考えないと.でも,逆に言えば,みんなが停滞するからこそ,何か新しいやり方を見つければ価値が生まれるし,ワクワクする思いと,心配とが同時にあるっていう感じです」

西尾先生:「そうですよね.今実際,学生も,特に2年生は就職活動も急にこんなになって停滞して不安に思っているんですよね.でも,いま谷尻さんが言われたように,これから必要なのは,どこかに 所属して依存するんではなくて,自分で考えて動ける人なんだろうなっていう事ですよね」

谷尻先生:「うん,ほんとそうですよね.ちょうど,非常事態宣言が出た次の日に,オンラインサロンの募集をしたんですよ」

西尾先生:「ええ,あの『社外取締役』のですよね」

谷尻先生:「はい.あれも,仕事づくりのためにやっていて,変な話,仕事が生まれれば設計って出来るじゃないですか.100人の枠で募集したら600くらい応募があったんですよ」

西尾先生:「すごいですね」

谷尻先生:「ええ.それでちょうど今2回目の募集をしているところなんですけど.ちゃんとみんな自分たちで学びたいということでもあるし,そこにお金があつまってくるので,毎月300万円くらいの資金ができるんですよ.そしたら,それでみんなで土地買って建物立ててみんなが利用できるような場所を作ってもいいなと思っていたりします」

西尾先生:「だから,もう,会社っていうものが個人に細分化されているというか,会社の仕事を分業していたしくみだったのが,どんどん個人が出来る仕事の積み上げで会社の仕事ができてくるっていう逆転現象が起きてきている気もしますよね」

谷尻先生:「そう,ある意味では帰属意識が意味なくなる,意味なくなるとまでは言わないけど,かなり希薄になるというか,そういう気はしますね」

西尾先生:「なるほど.ありがとうございます.まずは僕の方から谷尻さんに,今からの社会の状況をどう考えるかについてお話を伺ってみました.続いて,学生から何かありますか?」

どこから学べばいいんだろう

Tさん:「いま,オンライン授業が続いていて,直接先生に合わないまま進んでいく授業もあるんですけど,そんな中で,どこから学べばいいんだろうって考えています.学校以外でも学ぶところを探したほうが良いのか.どう考えられますか?」

谷尻先生:「ぼく学生にいつも言ってるんですけど,むかしから,大学の授業って潜り込もうと思えば潜り込めるじゃないですか.いまはオンラインだから逆に難しいのかもしれないけど.で,潜り込めるんだったら,自分で調べて受けたい先生の授業受けて,自分でカリキュラムつくって自分で卒業証書つくって自分で就職活動したら絶対受かるって」

西尾先生:「自分で学校を作るってやつですね」

谷尻先生:「そう.結局,与えられたものだけでやるか,自分で獲りに行くかって,自分の人生を左右すると思うんですよ.与えられた中でやることしか知らない人は,与えられないと何もできない人になりますよ.だから,まさに自分で考えなさいっていう事ですけど.いまは,インターネットで学びたいことは学べる世界になってきています」

「学ぶところが学校だけだっていう事じゃないし.インターネットで何でも学べる.そう,ちょうどInstagramで,映像編集できる人を募集したら30人くらい集まったんですよ.Instagramだと,応募した人の写真を見ればその人がどういうセンスを持っているかが分かっちゃう」

西尾先生:「これが残酷ではあるんだけど」

谷尻先生:「残酷ですけど,センスがはっきり出ちゃうんです.それでいい人をセレクションしたら,なんとひとりは学生だった.で,選んだふたりが映像の仕事をしたいって言うから『じゃあ,ふたりで会社つくって,って』(笑)それでいま,僕が発注したりするんですけど,どんどん映像つくっていて,技術もどんどん上手くなってきていて,卒業するころにはすぐ独立ってなると思うんですよ」

西尾先生:「なるほど.面白いですね.学生のうちからやろうと思えばできる環境になってるってことですもんね」

谷尻先生:「ましてや,いまは言い訳出来ない時代だと思うんですよ.伝手がないって言っても,やろうと思えばInstagramやFacebookで連絡できるじゃないですか.これだけ情報がオープンになっているわけですから.お金がないって言っても,素晴らしい企画書作成してクラウドファンディングって出来るわけだし,やらないっていう言い訳が出来ない時代ですもんね.僕らの時代って会いたくても会えなかったわけですからね.今は,いいアイデアがあれば,それを拾ってくれる人と出会える環境があるわけですからね.なんか,羨ましいですよね.しかも,(オンライン授業だから)学校に行かなくてもいいわけでしょ?無茶苦茶時間の使い方が自由にできるじゃないですか.いよいよ,やりたいことがやれる環境が出来たんじゃないかと思ってます」

西尾先生:「なるほどね,でもそこは,発想の転換をしていかないと普通に過ごしていると気付かないことかもしれないですね」

谷尻先生:「そうですね.そう,しかも,その映像チームに聞くと,映像は誰からも習ってもないのにめちゃめちゃ上手いんですよ」

西尾先生:「あー,それは今の時代ならではという感じがします」

谷尻先生:「で,どうやって出来るようになったのかって聞くと,Youtubeだって言うんですよ」

西尾先生:「あー」

谷尻先生:「ぜんぶYoutubeで調べてやってきたって」

西尾通哲:「分かります.いまはもう,いろんなことがYoutubeで学べちゃう時代なんですよね.だから,学生は学校をいかにうまく利用して,さらに自分で能力を高めていくことを考えるとか,そういうことが成長に繋がると思うんですよね」

谷尻先生:「まだ,穴吹の先生はクリエイティビティを高めることを普段から実践されているじゃないですか.でも,そうじゃなくてお経みたいな授業をする先生がいる学校も多いじゃないですか(笑)

西尾先生:「それは…そうですね(笑)」

谷尻先生:「だから,ちゃんと学生たちはそれを見極めて,誰から学ぶかってことをしっかり考えたほうが良いですよね(笑)」

西尾先生:「いやー,そうですね(笑) ありがとうございます.他に学生から何か質問ありますか?」

イベントについてどう考えられますか?

Mさん:「いろいろ建築に限らず楽しいことに積極的に関わっていくようにしていて,学生主体のイベントを仕掛けている人たちと知り合って,広島のイベントを仕切るように言われたんですけど,コロナが来て,他の地方のイベントもうまくいっていないみたいで.この時代に,谷尻さんならイベントについてどう考えられますか?」

谷尻先生:「本当は,イベントもやってもいいんじゃないかって思ってますけど,世の中としてはやりたくないっていう人もたくさんいるし,仕事上だと,相手が嫌がるようならそれに合わせるしかないんですけど,やれる方法はあるんじゃないかといつも思っていて.コロナを良く調べて,感染防止の対策しながら特徴のあるイベントに出来る可能性もある.例えば宇宙服を着るとか(笑)」

西尾先生:「そうですよね,学校も今は,普通に前のように教室に集まれないから,集まろうとすると倍の広さが必要になる.でも,じゃあ,その前提で何が出来るかとか,どう校舎全体を使うかとか,考えることが必要になるし,そこが実は可能性というか,面白いとこなんじゃないかって思うんですよね」

Mさん「なるほど」

谷尻先生:「いま,古いビルをリノベーション(再生)して,新しい事務所とホテルなどの計画が進んでるんですけど,このタイミングでコロナが来て,それまでは,1階にカフェ入れて,2階にギャラリー入れて,とか考えていたんですけど,いまそれをそのままやっちゃまずいなと考えて,何が今必要か考え直して,全てのサッシ(窓)を外そうって言っていて.建物の中だけど,サッシがないから,外と同じ空気が循環している.冬は薪ストーブ焚けばいいし,夏は日陰だから外よりは涼しいし,かき氷売れるじゃん,とか話していて.もう,(コロナのせいで)これまでの世界にも戻れないと思うんですよね.だから,これまでの価値観ではないものが必要だなって.もう全部外にしようって.でもスタッフは,モノが盗まれますよとか言って(笑)盗めるなら盗んでみろみたいなのが新しいよ,とか(笑)そういう前提で,新しい外のような建物をどうやって実現するかっていう事を考えたり.ビルの中で外風呂があったりとか,変な体験が出来る価値を提供するチャンスでもある.いま,いろんなホテルが守りに入っている時に,新しい価値が提案できれば,意味があるでしょうし.世の中のメディアに流されすぎないってことが大事だと思います」

西尾先生:「そういう極端なアイデアって,でも,きっかけがあればだれでも持っているような気もして.それを実現化させるにはもちろん経験と技術が必要だけど,考えることがやっぱり一番大事というか」

谷尻先生:「僕らより若い人の方が,常識を知らないっていう武器があると思うんですよね.昔って,あるルールに対して『それ誰が決めたの?何時何分何秒?』って言ってましたよね.今こそあの言葉を正しく使うべきだなって.本当に正しいのかって,疑いの目を持って当たり前と向き合うことが大事なんじゃないかな.だから,イベントも,室内でやらなくていいかもしれないしね」

Mさん:「その発想はなかったです.ありがとうございました」

西尾先生:「他にまだだれか聞きたいことありませんか?」

そんな考え方になったきっかけは?

MAさん:「谷尻さんの考え方にいつも憧れます.そんな考え方になったきっかけとか,映画とか,何かあればぜひ教えてください」

谷尻先生:「僕は,いつも言ってるんですけど,『はじめて考えるときのように』って本ですよね」

西尾先生:「そう,でも,それは谷尻さんが独立した後だから,それまでに,もうそういう思考は持っていたってことですよね」

谷尻先生:「そうですよね,背中を押されたというか.そういう本ですね」

西尾先生:「僕はもう以前から谷尻さんとはいろんな話もさせてもらっているんですけど,そんな中で聞いたのは,あれですよね,昔はシャイな生徒だったって」

谷尻先生:「そうですね(笑)もう誰からもその名残りが見えないと言われますけどね.でもね,やっぱり,いろんな人がいろんなこと言うじゃないですか.学生の皆さんもそうでしょうし.いろんなことを決めるときに,いろいろ言われますけど,でも最終的に選択するのは自分じゃないですか.その自分が選択したことを人のせいにしない生き方をすればいいんじゃないかなって思います.『お前が言ったからやったんだよ』って言っても,それ最終的には自分が選んだんだよね,って話じゃないですか.だから,そのために,しっかり考えることしかないというか.考えることは誰にでも出来ることですし」

西尾先生:「そうですよね,あと,一度選択したら,もうそれが間違いなかったって言えるまでやり切るしかないというか(笑)」

谷尻先生:「そうそう.それを,Yesにするまであきらめないというか(笑)いま,Tectureというサービスを作ってるんですけど,リリースする前には周りの反応は良くなかったんです.でも,コロナが来て,そういうwebのプラットフォームをみんないいですねーって言い始めてくれて.不安もあったけど,絶対これが良いんだっていう意思がそれを後押ししてくれると思っています.最初は怪訝な顔をしていた同業者も,いちど始まったら,喜んでインタビューとか受けてくれたり.いまは,Instagramでもすぐに連絡取れるから,海外でも有名無名に関わらず良いと思ったら連絡して,メディアに載せないかって言うんです.すると,だいたいが良い反応して返してくれるんです」

西尾先生:「もう,エージェントとか代理店とかなしで,直接取引できる環境になってるってことですもんね.だからこそ学生もチャンスがあるということですよね」

谷尻先生:「学生だから,それがアドバンテージにもなるんですよね.学生なのにすごいねって,学生の特権ですからね.良い大人が一寸できて当たり前,出来なかったらディスられるわけですから.僕は,息子に小学生で起業させたいと思ってるんですよね(笑)」

西尾先生:「それがまた話題になるしね」

谷尻先生:「そうですね(笑)」

西尾先生:「今日は,貴重な時間を,そして出来立ての新居からのオンラインでの参加,ありがとうございました.また,機会をみてぜひ声掛けさせてもらいますね」

谷尻先生:「いえいえ,久しぶりに楽しかったです.ありがとうございました.あ,東京に来ることがあったら,ぜひ自邸に見学に来てください」

西尾先生:「有難うございます,ぜひ寄らせてもらいます.でもいつになるんだろう(笑)」

谷尻先生:「ほんとですね(笑)」

西尾先生:「ありがとうございました」


谷尻 誠 Tanijiri Makoto
SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 設立 共同主宰

1974年 広島県生まれ
1994年 本兼建築設計事務所
1999年 HAL建築工房
2000年 建築設計事務所suppose design office 設立
2014年 SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 設立 共同主宰

2001年- 穴吹デザイン専門学校非常勤講師
2011年- 広島女学院大学 客員教授
2012年-2016年 武蔵野美術大学 非常勤講師
2014年-2016年 昭和女子大学 非常勤講師
2015年- 大阪芸術大学准教授

社食堂、絶景不動産、21世紀工務店、未来創作所、Bird bath & KIOSK、tectureを経営

 

 

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