2025年11月04日
建築演習設計の授業で、Sequence Studioの代表を務める建築家・前田 大輔さまにお越しいただき、特別講義をおこないました。
前田さまは、SUPPOSE DESIGN OFFICE在籍時代に広島駅建替え工事を担当し、中央空間や屋上空間のデザインを監修されました。
今回は、建築学科の学生たちの作品課題への講評と、広島駅建替えプロジェクトの詳細をお話いただきました。
まずは、学生課題の講評会。
今回の課題では、1年生は「公衆トイレ」、2年生は「美術館」の設計・デザインの提案に取り組みました。
スライドを使って、施設のコンセプトや想定する利用者層、現在持つ問題点を改善するための工夫点などについて説明しました。
各自発表が終わると、講師と前田さまより講評をいただきます。
質疑応答も交えながら、作品に対してさまざまなアドバイスをいただきました。
施設の持つ意味や用途を改めて考えることで新たな視点へ展開ができるということ、昔から問題視されている社会問題を解決に導く力が「建築」分野にはあるということなど、示唆に富むコメントをいただきました。
学生たちは、いただいたアドバイスを反映させ、ブラッシュアップするため今後も制作活動に励みます。
講評を終え、前田さまが大きく関わられた広島駅建替えプロジェクトのお話へ。
路面電車のターミナルは、水の都と呼ばれる広島らしい”川”をモチーフにゆらめく水面が表現されています。
壁面の板1枚1枚は、くっついたり離れたりと一見ランダムに配置されているように見えますが、光の反射でゆらめきを表現できるよう波を数学的に表現したパターンで、実は緻密に計算されて配置してあるそう。
3Fの「雁木テラス」からは、路面電車の乗り入れを上から眺めることができ、旅や仕事のスタート地点としての駅の表情と、広島の街へ戻ってくる人々の思いを感じられる場所となっています。
緑あふれる屋上は、人々の交流の場として、街を眺めながらリラックスして過ごせる空間となっています。
屋上に人が集まることで、下へ降りる際に買い物や飲食をするという商業的な効果も踏まえつつ、広島の都市について多くの人に知ってもらい、都市としての価値を高め、街自体を作り上げていく―そんな意図も込められています。
”川”や”しまなみ”や”やまなみ”など、広島の街の姿を落とし込んだ空間デザインは、通勤途中にある川の水面のゆらめき、川原で光を帯びながら揺れる草木など、前田さま自身の普段の生活からもヒントを得たそう。
現在は駅周辺のデザインにも携われているということで、植栽やベンチなど広島らしい自然と人がともに過ごせるすてきな空間となっています。
公共の施設は「白い空間」が多く、今回の路面電車ターミナルも「白色で」という要望があったとのこと。ただ、同じ白色でも陰影をつける素材などで表情を変えられるよう工夫されたそうです。
今回のお話のなかで、コストや費用など、現実的な問題も影響するなかで、より良いものを作り上げていくプロとしての姿勢も学ぶことができました。
「実績がないと公共建築に携わることはできない。とにかく努力することが大事。俺がデザインをするんだ!という気概を持ちつづけてください」
学生たちへ力強い励みの言葉をいただき、講義は締めくくられました。
学生たちにとって、第一線で活躍されている方からのエールは、今後の活動への熱意とモチベーションにつながったことでしょう。
前田さま、この度は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。
やりたいことを
みつけよう!