今回は、この春、建築学科を卒業して現在設計事務所で働く先輩に、在学時代や現在のお仕事についてお話を聞いてみました。
建築やインテリア分野、そして、ものづくりに興味のある方はぜひご覧ください。
今回お話をうかがったのは、この春、建築学科を卒業された泉 翔真さん。
泉さんは現在、広島市内に事務所を構えるHANKURA Designさまで、さまざまなプロジェクトに関わりながら働かれています。
実は、建築学科の前に商品企画デザイン学科でプロダクトについて学び、4年間をこの穴吹デザイン専門学校で過ごされた泉さん。
今回は、現在のお仕事内容だけでなく、入学の経緯や2学科をまたいでの学校生活についてなどもお話してくださいました。
左)越智 寿美礼さん
右)泉 翔真さん
泉さんは、設計事務所に就職されましたが、今はどんなお仕事をされていますか?
そうですね、例えば上司が考えたスケッチを、僕が図面に書きおこしたりしています。 図面を見ながら上司と打ち合わせをして、「ここにこういう家具がほしい」「こういう色味にしたい」など指示をもらって、それをBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)というソフトを使ってCGに起こしていったり。 BIMは、導入コストの高さと技術習得までの時間と手間を要するので、まだ建築業界で導入しているところは限られていますが、これから主流になっていくんじゃないかと思います。
PC画面上で実際の図面を見せてくれました。
最新技術も使いながらお仕事をしているんですね。 そのほか、ハンクラ(HANKURA Design)さんで泉さんが関わったプロジェクトやお仕事には、どんなものがありますか?
僕がインターン生の時にスタートしたプロジェクトなんですけど、南区出汐町にある「ヤマヤマミタ」とか。ハンクラが空間デザインを手掛けた広場で、僕はそこにあるプロダクトの一部をデザインしました。 ハンクラでは、”建築”に限らず、”デザイン全般”の仕事ができるところが魅力だと思っています。 グラフィックデザインもさせてもらったり。ハンクラの案件のひとつの事務所設計で、そこの壁に世界地図を作らせてもらったり、お手洗いのピクトグラムもオリジナルで作らせてもらったりしました。 お客さまと打ち合わせしながら、文字の大きさとか細かいところを決めました。今は、こういう小さいところから任せてもらっています。
建築だけでなく、商品企画デザイン学科での経験も生きているんですね。 そして、こういった業界ではお客さまとの打ち合わせは大事ですよね。
はい、お客さまとの打ち合わせは本当に大事にしています。 お客様の思いに寄り添いながら、一緒に作り上げていくイメージで細かく打ち合わせしています。
今回は、古民家を改修した事務所 HANKURA Design 2ndでお話をうかがいました。
泉さんは、商品企画デザイン学科、建築学科の2学科で4年間学ばれましたが、最初から2学科を修了する予定だったんですか?
そもそも僕は建築がやりたくて。物心ついたころから絵を描くのが好きで、ものづくりも好きだったので、絵を描いて仕事にできる職業って何だろうって考えた時に、「建築家」だったんです。 でも、出願を決心した時点ですでに建築学科は定員いっぱいで募集を締め切っちゃってたんです。だから、入学した時点で商品企画デザイン学科の次は、建築学科にいこうって決めていました。入試の面接でも2つの学科にいきますって宣言して、面接官の先生方にびっくりされました(笑)
まさかの!そこで商品企画デザイン学科にいこうと思ったのはなぜ?
名だたる建築家って、みんな”椅子”を作ってるんですよ。チャールズ&レイ・イームズ夫妻とかル・コルビュジエとかミース・ファン・デル・ローエとか。 単純に建築だけ学んで建築家になるのって面白くないなって思ったんです。僕も、そういう小さいモノから”ものづくりの基礎”を学んだうえで建築を学べば、より深いアイデアが生まれるんじゃないかなって。 だから、大学を4年間いくんじゃなくて、専門学校で4年分学んだほうが僕には合っていると感じて、こういうルートを選びました。
そうだったんですね。大学も視野には入れていたんですか?
一応。読書が好きで、建築についての本を読んでいたときに、谷尻 誠さんの本に出会ったんです。プロフィールから穴吹デザイン専門学校卒業って知って、「あ、広島にあるんだ」って。そこからすぐ学校のこと調べて、座学より実践の多い穴吹のカリキュラムとか見て、飽きずに好きなことをずっとできる環境っていいなって思って、それまで専門学校って存在を知らなかったんですけど、大学よりもこっちの方が僕には合ってるなって。
やりたいことが明確に決まっていたからこそ、効率的に学べる環境が合っていたんですね。 穴吹では、2年間で基礎からはじめて応用まで学べるので、知識のないフラットな状態から学べるのも魅力ですね。
大学の建築学科に通っている友達も周りにはいるんですけど、どちらも良い部分はあるし、自分のいきたいルートによって進学先を決めるのが良いと思います。僕は規模関係なくとにかく設計事務所で働きたいって目標があって、ここでなら叶えられるなって思いました。
泉さんは、どんな学校生活を送りましたか?
課題が多いから、誰かの家に集まって課題合宿やったりとか! あとは、植物が好きで育てるのに熱中していました。叢(くさむら)という多肉植物店でアルバイトしていたので、そこで植物好きな人たちと出会って、今もその出会いが役立っています。建築関係の方も多く通っていて、たまたま仕事で関わることになったり。 あとは趣味で絵を描いたりもしていました。
課題合宿!青春ですね(笑) 植物と建築って関りが深いですもんね。 印象に残っている授業はありますか?
商品企画デザイン学科では、中道先生の授業が印象に残っています。 2カ月に1回くらい、それぞれ将来の夢を語る時間があって。今までの義務教育の時間って、みんなの将来の夢を語る時間ってあんまりないから、そういう機会を設けてもらうのは新鮮でした。同じ学科でもみんな持っている目標ってバラバラなんですけど、それを先生も学生も真摯に受け止めてくれて、人に話すことで改めて頑張ろうって気になりました。 卒業した今でも、久々に同級生に会うと話題に上がります。その場で聞いてくれた同級生たちに恥じない自分でいようって思いが原動力にもなっています。
そうなんですね。夢や目標は多種多様でも、「デザインの専門学校」という環境だからこそ、共通する部分もきっとあって、そんな仲間たちと学べたのも頑張る原動力になったのではないでしょうか。
建築学科講師の山根先生が改修に携わり、日本空間デザイン賞2024 審査員特別賞を受賞しました。
共通する部分があるっていうのはありますね。根本的にみんなデザインが好きなので、みんな趣味や好きなことが一緒で、高校の頃だと「建築家になりたいんだよね」って周りに話しても、「そうなんだ」で終わっていたのが、穴吹だと「じゃあどの建築家が好き?」とかって話が広がるんですよ。 それがまた、大学の建築学科の人と話すと、僕の周りはデザインというよりどちらかというと構造的な部分に興味がある人が多い。穴吹だと、建築でも意匠的なところで盛り上がることが多くて、そこが「デザインの専門学校」のなかにある建築学科ならではじゃないかなと思います。
同じ建築分野でも、大学ならではの学び、専門学校ならではの学び、そして「穴吹デザイン専門学校」ならではの学びと、それぞれに違いがありますよね。
そうですね。 たとえば、建築学科・インテリアデザイン学科の授業では、課題に使用するサンプルとかも学生のうちから自分で企業さんから取り寄せるんですよ。 だからこそ、マテリアルひとつはめ込むにしても幅広く考えられる。 あとは、先生方が現役で働くプロの方ばかりなので、仕事に対する視野も広がりました。 設計事務所とか企業で厳しい経験を積んで、修行してから独立している方が講師として教えてくれるので、企業に就職することだけが最終的なゴールではなくて、そのあと独立することも選択肢としてあるってことを知りました。
学生のうちに、「やっておいた方が良かったな」ということはありますか?
もっと「学生ブランド」を使っておけばよかったですね。
学生ブランドとは?
何も知らない怖いもの知らずの学生のうちにこそ、いろいろなことにチャレンジすればよかった。 インターンシップもいくつか行きましたが、学生って「選ばれる側」でもあると同時に「選ぶ側」でもあるから、その立場のうちにもっとたくさん行って経験すればよかった。 インターンシップは早めにいくべきだと感じました。そこで、大学や専門学校などさまざまな立場の同年代と出会えるし、その人たちからも学べるので。 プロの方がプレゼンしている場面とかも見ることができるし、そこから学校の課題のプレゼンとかにも生かせる。実際、そのあとの授業の捉え方も変わりました。僕だけでなくて周りの学生もインターンに行く前と行ったあとでは、全然違うなって感じました。
最後に穴吹を検討している方や在校生へメッセージをお願いします!
いずれ同業者になってライバルになると思うので、一緒に仕事が出来たらいいなと思いつつ、負けないように頑張ります。もちろん先輩たちにも負けたくないです! 仕事するうえで、穴吹の卒業生たちはさまざまな業界で活躍していて、一緒にお仕事することが多いです。在校中から学校内でも色んな人と関わっていたら、将来仕事をするときにそのつながりが役立つと思います。
商品企画デザイン学科、建築学科で学び、設計事務所で働く泉さん。
受け身の姿勢ではなく、学校生活で学んだ経験をもとに日々自分でできることを探しながら、少しずつ任される仕事が増えてやりがいを感じると語ってくれました。
今回のお話が、建築やインテリアデザイン、ものづくりに興味のある方にとって、背中を押すきっかけのひとつになったのではないでしょうか。
今、この記事を読んでいるあなたが、デザインの世界への一歩を踏み出せたらうれしいです。
8月2日(土)に、泉さんと広島駅周辺を巡るツアーを開催します!
谷尻 誠さんと吉田 愛さんが設計監修を務めた広場をはじめ、卒業生が手掛けた空間を泉さんが紹介してくれます。
建築や空間デザインに興味がある方は、ぜひ参加してみてください。
やりたいことを
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